中国電力が山口県上関町で計画している上関原発は、大きな分岐点を迎えようとしている。
山口県の二井関成知事がきのう、原発予定地の公有水面埋め立て免許を失効させることも含め検討していることを明らかにしたためだ。
二井知事は、「免許が失効になるのか、延長が可能なのか。二つの選択肢の中で、できれば6月議会で出したい」と記者団に語った。知事が原発計画推進に反対する可能性を示唆したとも受け取れる。
福島第1原発事故を受けて、国がエネルギー政策の見直しを進めることを踏まえての発言だろう。
福島原発事故で原発の「安全神話」は吹き飛んだ。地域住民の命と安全を守る知事の立場からすれば、「見直し発言」は当然だ。
従来、原発が立地する多くの自治体首長は「国策」を理由にして判断を避けてきたきらいがある。政府の見直しが予定されているとはいえ、自らが原発の是非を判断しようとする二井知事の姿勢は評価してよかろう。
上関町は伊方原発から約40キロで指呼の間といっていい。松山からも70キロほどで意外と近く、愛媛も無関心ではいられない。山口県の6月議会での結論を注視したい。
原発予定地は約33万平方メートルで、うち約14万平方メートルは海面を埋め立てる計画。県は2008年10月に埋め立て免許を出し、中国電力は翌年10月に着工した。免許期間は着工から3年。来年10月までに埋め立て工事が完成しなければ失効する。
工事そのものが反対派住民の抗議活動で大幅に遅れている。さらに、福島の原発事故後、中国電力は県の要請を受けて一時中断している。
きのうの知事発言が建設反対派を勢いづけるのはまちがいなかろう。
計画の抜本的見直しが必至になったばかりか、建設自体が困難になってきたともいえる。
都道府県知事らが、エネルギー政策をめぐって積極的に発言するようになった。
その代表が、原発の新規建設や運転延長の停止を求める考えを表明した大阪府の橋下徹知事だろう。
愛媛の中村時広知事も定期点検中の伊方原発3号機について、国の安全基準が示されるのを待って独自に安全確認する考えを示した。県議会の寺井修議長も同様の考えを表明している。
県として原発の安全運転に関与していくことは、県民の安全を考えれば当たり前のことだ。
国や四国電力を追認するような従来の姿勢がおかしかった。
原発が、一瞬にしてわれわれの生活を壊滅させることが証明された。行政や四電任せにせず、県民一人一人が関心を持ち続けることも必要だ。
大阪、愛媛、都道府県知事らが、原発ゼロへ県民の安全への意識が高まっていてうれしい。
「ミツバチの羽音と地球の回転」は上関原発の30年近く住民が建設を反対してきた映画。
30年も原発が必要はないのだから、これからも必要ない。完全に建設白紙になる日はもうすぐ!
6月と言わず、もう白紙しかない。本当に心からうれしい。